映画『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦と中村祐介のワールドが混ざり合った濃密な作品


 
好きな小説は数々あれど、森見登美彦さんの小説は、その巧みな日本語表現を駆使して綴られる偏屈な面白さと、神秘的なファンタジーが病みつきになる、独特のワールドを持った作品です。
今回、そんな森見さんの代表作「夜は短し歩けよ乙女」が映画化とあって、もちろん原作を読んでいた僕は、映画館へ足を運んできました。
※本記事はネタバレをふんだんに含みます。ご注意ください。

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◆特典がもらえた!でも「その2」とは?
映画館に入る前にチケットを渡すと、何やら小さな冊子を渡されました。なので、映画の話に入る前にこの冊子の話から。
 

 
中を開くとなんと森見さん著の小説です!内容は、登場人物である乙女から先輩への手紙となっています。開演前の薄暗がりで読みましたが、本作の後日談ですね。これはすごい!
でもよく見ると「特典その2」と書いてあります。これは一体?
 

 
調べてみると、公開1週目の来館で「特典その1」、2週目には「特典その2」がもらえるようです。
ええ!「その1」も欲しかった!仕事が忙しくて公開すぐに行けなかったんですよねぇ。「その1」は先輩から乙女への手紙らしいです。
 
「その2」では、乙女から先輩と親しくなるために映画館に行こうと決心する話で終わりますが、恐らく「その1」も映画館に行こうという流れなのでしょう。
とにかく、映画が始まる前に読める分量の森見さんの小説。しかも本編の後日談。これから始まる映画への期待が膨らみます。
 
 
 
◆圧巻!中村祐介のイラストが動いてる!
映画が始まると、まずはその独特の雰囲気のキャラクターや背景が新鮮です。これは中村祐介さんという方のイラストが原案。1時間半の本編まるっと中村祐介さんワールドが楽しめます。
もともと「ASIAN KUNG-FU GENERATION」が好きだった僕は、そのジャケットのイラストを担当している中村祐介さんのイラストと世界観が大好きでした。
 

 
その中村祐介さんのイラストが映画館で動いているというのが感動。独特の世界観は変わることなく、原作の雰囲気とも見事にマッチしていて最高でした。
そう、つまりこの映画は僕にとって好きな物だらけ!だったのです。
 
 
 
◆好きなシーンが完全に再現されてる!
さて、長くなりました。ここから映画本編のレビューをしたいと思います。
僕の関心事は、森見さんの描くへんてこだったり笑えたり、かと思えばグッとくる一言があったりという、つまり自分なりに好きなシーンがちゃんと映画にも入っているかどうかでした。
 
結論から言うと、原作に忠実なストーリーだったため、好きなシーン、覚えていたシーンはすべて映画にも反映されており、大満足。それらのシーンを特筆したいと思います。
 
 
①「ナカメ作戦」
まずひとつめ。なんと言っても「ナカメ作戦」、これですよ。
ナカメ作戦とは、「なるべく彼女の目にとまる」の頭文字を取った作戦もの。
主人公である先輩の意中の相手、黒髪の乙女に振り向いてもらうべく作られた作戦です。
映画の冒頭から出てきてテンションはダダ上がりでした。 
 
こんなシーンから始まることで、これから始まる映画がどんな雰囲気のものなのか、観ている人にはピンとくるというものですね。これは良い見せ方、良い作戦です。ん?つまりこれは制作陣の「ナカメ作戦作戦」と言えそうですね。
 
 
②李白の3階建てお座敷列車
原作を読んでいたとき、強烈に印象に残ったのが、金持ちで京都の街を3階立建てのお座敷列車で幅を利かす李白という翁。
3階立建てのお座敷列車が京都の街を走るってどんなファンタジーだ?という思いに駆られたのですが、映画では表現されると割と普通に受け入れられてしまいました。 
 

 
森見さんの小説ではこの李白の列車のように、現実的な話をしていたかと思うといきなりファンタジー要素が突っ込んできます。それで現実とファンタジーの境目がなくなった世界観があるのですあ、映画でもすごくよく表現されてました。
 
 
③火鍋
これも印象的だったシーン。古本市の怪しいテントで李白が催す激辛の鍋、火鍋。
しかもこの火鍋を食べるのは、真夏の密封されたテントの中。さらに、映画では描かれていませんでしたが、許される飲み物は熱々のお茶のみという過酷な条件なのです。
 
熱くて辛くて汗が大量に出るから、水分を取らないと死んでしまう。だけど飲み物が熱々のお茶であるというまさに地獄のスパイラル。
最後まで火鍋を食べ続けた者に望みの本を与えるという意地悪な李白ですが、これに見事勝ち抜いた先輩の根性は見もの。恋の炎が火鍋に勝った瞬間です。
 
 
④先輩の自分内会議
終盤のシーン。主人公の先輩は流行りの風邪を患ってしまいます。
「ナカメ作戦」というまどろっこしい作戦で恋の外堀を埋めることしかできない先輩でしたが、なんとその先輩の自宅に、意中の乙女が看病にやってくるという展開に。
テンパった先輩の内面では、無数の自分とはちゃめちゃな会議をし、葛藤します。
 
葛藤とは、乙女が来る前に逃げ出すか、きっちり迎え入れるかというもの。
「乙女に気持ちを伝え、フラれたら立ち直れない。逃げ出そう」という逃げ出そうとする自分はゾンビのような姿で描かれ、一方の「ちゃんと乙女と向き合って外堀ばかり埋める日々を終わらせる!」という自分はカウボーイのような姿で描かれ、双方が先輩のなかでひしめき合います。
 
このテンパり具合を表現するためだと思うのですが、このシーン、非常に騒々しかった(笑)何がどうなっているのか僕も見失いかけていましたが、そうしてウダウダしているうちに乙女は自宅までやってきてしまい、看病を受けたあとに先輩はなんやかんや言って乙女をデートに誘います。
 
このシーン、ダメダメな学生の先輩が現実の恋と向き合い、一歩前進する姿が描かれていましたが、素直な僕にはグッときましたね。はちゃめちゃな展開とへんてこな展開ばかりかと思いきや、こうしてスッと人の心に希望だったり前向きな生き方だったりを示す。そのまとめ方にほっこりさせられます。
 
 
 
◆星野源の声がイイ!
最後に、先輩の声を演じた星野源、めちゃくちゃよかった!
聞き取りやすく特徴もある声でも声優としてもやっていけるのでは?と思ってしまいました。先輩のセリフをずっと聞いていたいという謎の感情を抱いてしまったくらいです。
星野源、きてますね。八面六臂の働きとはこの人のことだと思います。
 
その他の声優さんもとても豪華で良かったですね。樋口師匠の中井和哉さんの声もかなりハマってました。
 
 
 
◆最後に
原作を読んでいない人は、正直「観に行こう」とはならない作品かもしれない。と僕個人としては思います(笑)
そして、全編を通して結構にはちゃめちゃなので、展開について来れない人も多かったのではないでしょうか。
ストーリーを楽しむというよりも、そのシーンそのシーンのやり取りを楽しむのが、この映画を味わうコツだと思います。 
 
 
 
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
 
 
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