映画「母と暮せば」から人間の選択と生き方を学ぶ【ネタバレあり】

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映画

先日、母方の祖母に付き添い、12日に公開されたばかりの映画、
「母と暮せば」を観に行ってきました。
とても稀なケースで、初の母方の祖母との映画。
初、劇場での山田洋二監督作品。
 
しかし、これがとっても泣ける話。
人間がどんな選択をし、どんな生き方を望むのか。
それを深く学べる作品でした。

 
 
◆舞台の紹介と設定

舞台は1945年と、その3年後の長崎。
そうです、1945年の8月9日は長崎に原爆が落とされた日。
 
二宮和也の演じる浩二(こうじ)と、
吉永小百合の演じるその母、伸子(のぶこ)。
浩二の父も兄もすでに他界しており、二人暮らす浩二と伸子でしたが、
その浩二も、8月9日の原爆で一瞬にして消えてしまいます。
 
息子の死んだ証拠を探す伸子ですが、3年経っても何も見つからず、
ついに「息子は間違いなく死んだのだ」とあきらめます。
 
しかし、あきらめた途端、浩二が家にやって来ます。
ただし、この浩二は亡霊。
亡霊の浩二はそれからちょくちょく母のもとを訪ね、
楽しくも悲しい生活が始まります。
 
 
 
◆長崎の原爆の描写
1945年8月9日。
冒頭、原爆を搭載したB29のコックピットの映像が流れ、
長崎に原爆が落とされた経緯などが紹介されます。
 
そんなこともつゆ知らず、長崎市内の医科大学に通う浩二。
その講義中に原爆が落ち、浩二たち医学生は一瞬にして死んでしまうのですが、
この原爆の落ちるとき描写がインパクトがありました。
 
「ピリー!」という電子音のような音が響き、
講義を受ける浩二の視界が突如真っ白に点滅したかと思うと、
目の前のペンのインクのビンが熱に溶け出し、
その後爆音が轟きます。
 
この、ビンが熱に溶け出す映像が頭にこびりつきました。
一瞬にしてビンの融点に達した原爆の熱。
人間なんてひとたまりもありませんよね。
 
そうして浩二は一瞬にして死んでしまったのです。
 
 
 
◆浩二を見つけたときの伸子の笑顔
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僕がこの映画全体をとおして一番印象に残っているのは、

息子、浩二の亡霊を見つけるたびに”ぱあぁ”と明るくなる伸子の笑顔です。
吉永小百合という女優さんをちゃんと見る機会がなかった僕ですが、
「“息子を愛する母の笑顔”ってこれなんだ」とスッと思えたのです。
この辺が大女優の素晴らしいところなんでしょうね。
 
浩二はふっと現れて母親とわいわい思い出話をしたと思ったら、
寂しくなるとすうっと消えてしまいます。
そしてまたひょっこり現れるのです。
 
そのひょっこり現れる浩二を見つけるたびに、
「浩二、来てたのね」とぱあぁと笑顔になる伸子。
そのシーンのたびにいちいち感動してしまい、
常に涙腺がゆるゆるしておりました。

 

◆浩二と町子の思い、そして選択
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浩二には将来は結婚を、という話もしていた恋人がいました。
それが黒木華演じる町子という女性です。
素朴ですが清楚で優しい町子は、
浩二が死に、ひとりになった伸子を訪ね、
家の手伝いをしながら伸子を支えます。
 
しかし、浩二が死んで3年。
伸子は、町子も浩二を忘れ、
他の人と結婚して幸せになるべきだと考えるようになります。
 
伸子は、浩二に「町子ちゃんに好きな人ができたら、
お前は諦めないかんよ。お前はこの世の人じゃないんだから」と言います。
この言葉を聞いた浩二は、血相を変えて「イヤだ」と拒絶します。 

伸子は町子にも、その気持ちを伝えますが、
町子も「浩二を忘れるなんてできない。このまま独身でいい」
と拒絶します。 
 
 
この状況、なんともつらいですよね。
僕は男なので、死んだ浩二の立場に立ってしまうのですが、
僕が浩二でも同じ反応をしてしまいますよね。
自分の好きな子が、同じように自分を大事に思ってくれている。
それが自分が死んだことで、もう同じ将来はかなわない。
 
自分では町子を幸せにできないと頭でわかっていても、
それを心と記憶が許してくれないのです。
 
 
伸子は、その後も両社に粘り強く訴えます。
浩二の方は、町子がこの先幸せになるためには、
他の男と結婚して、子どもを産んで行かないといけないと悟り、
母の訴えに納得します。
 
しかし、町子はかたくなに浩二への想いを貫きます。
ですが少しずつ、信子が自分のためにそう言っていると感じた町子は、
ついに同僚で小学校教師の黒田と結婚することを決めます。
 
 
そのとき、信子と浩二に謝る町子を見て、もう僕は涙、涙。
何てつらいんだろう。そしてなんて3人とも優しいんだろうと思ったのです。
浩二は、自分では町子を幸せにできないと苦しみ、でも町子の幸せを願う。
町子は、浩二への想いや伸子への裏切りだと苦しみ、でも伸子の思いやりを汲む。
伸子は、息子の愛する人が息子を忘れることに苦しみ、でも町子の幸せを願う。
 
3者3様の苦しみと、それに打ち勝つ願い、思いやりを持っているのです。
人の生き方って、まさしく優しく、悲しい物語なのですね。
 
 
 
◆ラストシーン。伸子の選択
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ラストシーン、信子は浩二の亡霊に手を引かれ、息を引き取ります。
そうとは知らない近所の女性は、
「伸子さん、一人きりで死んでしもたの?かわいそうに」と泣き崩れます。
そうです、端から見たらそう見えるでしょう。
 
しかし、僕たちは鑑賞者は、浩二と一緒で死んで行ったとわかっています。
これは、信子の選択だったのです。
 
この物語、信子がこの世に粘り強く生き続けるなら、
上海のおじさんといっしょに暮らすべきだった。
強靭ながめつさで闇市からいろんな食材を手に入れてくるおじさんは、
伸子ひとりを養う生活力が十分にあっただろうと思うのです。
 
しかし、信子はそうせずに、息子との楽しく一緒にいれる世界を望んだのです。
そう、それだけのこと。
悲しい結末のようだけど、最後は伸子が自分自身で決めたのです。
 
 
 
◆最後に
「母と暮せば」というタイトルと、山田洋二監督作ということ、
そして吉永小百合。
祖母が、いえ、祖母の年代がいかにも好みそうな作品だなと、
最初は正直気乗りしなかったのですが、気づけば僕が祖母より泣いていました。
 
長崎の原爆という、これまでも多く描かれたテーマだとは思いますが、
悲しい設定のなかで生まれる人と人とのやさしさと思いやり、
そして葛藤のなかからの選択。
 
人が生きるということは、こんなにもやさしくて悲しいのだ
ということを、穏やかな映像でしっかりと伝えてくれる映画でした。
 
僕のような人は劇場内やはり少なかったけど、
若い人にこそオススメの映画だと思います。

 

 

 

コメント

  1. […] 二人。映画監督の山田洋二さんと歌手の美輪明宏さんです。戦後70年をテーマに、公開中の「母と暮せば」を絡ませたトーク番組でした。この番組での山田洋二監督の言葉に感銘を受けた […]

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